『目黒のあのスタジオが喫茶店になったんだって』
大学時代に入っていた軽音サークルでバンドを組んでいた。
スリーピースバンドで、その時いつも一緒にいた3人で組んだ。
ギターボーカルが俺で、ドラムがともちんで、ベースがとね。
バンド名は「lily no lyric」。
3人それぞれ単語を出して、投票制で決めた名前だ。すごく繊細で雰囲気もあって、とても気に入っている。
曲は、カバーとオリジナル曲を一曲ずつ文化祭で演奏をした。
その時、通っていたスタジオのことを、ベースにそう言われた。
そのベースは、ベースの才能はなく、俺が言ったコードを下手くそに演奏するタイプだった。
「あの時行ってた目黒のスタジオが喫茶店になってたよ!
これ、あれじゃない?歌詞にできるんじゃない?」
相変わらずのちゃらんぽらんな声のトーンでそう言って、続けた。
「大学時代に通ってたあのスタジオが喫茶店になったんだって。
その時、組んでたちゃらんぽらんなベースがそう言ってきた。
喫茶店の名前はmoonというらしい。
ちゃらんぽらんでベースの才能はなかったが、その一言で俺をエモーショナルにさせる才能はあったんだな。」
これは、フィクションである。